不妊症とは、『避妊をしていないのに1年以上にわたって妊娠に至らない状態』と定義されています。
通常、健康な夫婦であれば避妊しない限り1年以内に80%妊娠できるというデータがあります。しかし現在、不妊で悩まれている方は、6組に1組と言われるほど多いです。
年齢によっても妊娠率は大きく差がでます。35~40歳の女性では、排卵時期のタイミングが合っていても妊娠率は約30%と言われています。また、体外受精の出産率では、32歳で20.1%、そこから徐々に下がり始め、37歳以降からは1年に2%ずつ下がるというデータがあります。
「日本産科婦人科学会 2016年」
年齢が上がるにつれ子宮内膜症・子宮筋腫・排卵障害などの婦人科疾患が増えることや、卵子の数の減少や質の低下も加速します。男性も加齢により精子の運動率が低下します。昔から不妊の原因は女性にあるものと思われがちですが、近年、実際には半数近くが男性に何らかの原因があることも分かってきました。また、男女ともに加齢による染色体異常の発生頻度も増加するため、流産の頻度も高まります。
近年の晩婚化に伴い不妊症と気付く事さえ遅れているのが現状です。
今、医療は進化し昔は原因不明とされてきたものも徐々に分かるようになってきました。
ただ、一般的に検査できる範囲では原因を特定できない場合も少なくありません(原因不明不妊)。そういった場合は更に詳しい検査が必要となります。
不妊の原因となりうる症状として一般的には以下があります。
妊娠しても、流産をくり返してしまう状態を不育症といいます。
流産は珍しいことではなく、1回の妊娠につき、妊娠した人全体の約15%は流産になるといわれています。流産率は女性の加齢とともに高まり、35歳で約20%、40歳で約40%、42歳で約50%と報告されています。
流産の原因の多くは、染色体異常です。染色体異常のリスクも女性の加齢とともに高まります。染色体異常は受精卵の段階で約40%、着床前の段階で約25%、妊娠初期の段階で約10%、自然に染色体異常の赤ちゃんが生まれる確率は0.6%と報告されています。
一般に2回続けて流産する場合を「反復流産」、3回以上続けて流産する場合を「習慣流産」といいます。習慣流産や、妊娠中期以降の胎児死亡は稀ですので、不育症の検査を受けることをお薦めします。
不育症の原因の一つとして、近年「抗リン脂質抗体症候群」が注目されています。抗リン脂質抗体は、流産や死産のほか、重症妊娠高血圧症候群や胎盤機能不全にも関連しています。
抗リン脂質抗体症候群は、血液凝固異常を招くことから不育症を起こしやすいとされています。胎盤内で、抗リン脂質抗体によって血栓ができやすくなり、血液循環が阻害されます。その結果、胎芽・胎児に血液や栄養が届かずに流産・死産が起こりやすくなると考えられています。
また、抗リン脂質抗体症候群に起因しない、「血液凝固異常」(第XII因子欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症など)も血栓をつくりやすいことから、不育症になりやすいことがわかっています。
これら「抗リン脂質抗体症候群」や「血液凝固異常」の治療には、血栓ができるのを防ぐ薬物療法を行います。
子宮形態異常には、弓状子宮、中隔子宮、双角子宮、単角子宮、重複子宮などがあります。この中でとくに子宮内腔が2つに分かれている「中隔子宮」の流産率が高い傾向にあります。子宮形態異常があっても、必ず流産するとは限らないので、無治療の場合もあります。流産をくり返す場合には、子宮形成術という手術を検討します。