当院での自然分娩とは、「不必要な医療介入をせず、妊婦さん・ご家族が満足できる分娩」と考えております。
「不必要な医療介入」とは、病院都合の医療介入を行わないことです。
病院側の都合で早く生まれるようにと人工的な陣痛を起こしたり、全例に会陰切開を行ったり、
医療処置が行いやすいように全員に分娩台での仰向けのお産を誘導する、等は行っておりません。
母子が安全な限り「待つお産」を行いますので、お母さんの主体性を大切にし、リラックスできる分娩体位(フリースタイル)を尊重しながら
「母に備わっている産む力」と「赤ちゃんの持つ生まれようとする力」を最大限に引き出せるよう出産のプロである助産師がお手伝いいたします。
必要だと判断した時は、母児の安全を第一に考え医療介入が適宜行える体制をとっております。
詳しくは「医療方針と特徴」をご覧ください
帝王切開や無痛分娩、和痛分娩とは違い、陣痛や腹圧など自然の母体の娩出力により人工的な介助を行わずに経膣で分娩することです。
当院での自然分娩の定義は「医療介入がなければよい」ではありません。ただ妊娠・出産を自然に任せていたら助からない命があるのも事実です。
ここ数十年の医療技術の発達により、周産期(妊娠28週以降)の死亡率は下がりましたが、それは、医療があるからこそ守られた命です。
出産は自然の営みではありますが、生物にとっては今も昔も命がけの行為であることを考えると、必ずしも安全ではないことを私たちは重視せざるを得ません。
自然分娩だからこそ起こりうる「万が一」、「緊急」に対応できる施設・技術・マンパワーを整えて、患者様に安心を提供することが私たち医療者の責任です。
では、「自然」と「安全」は相反するのでしょうか?
当院では、自然分娩ができる方に対しては自然に見守る、母子に何らかの危険があると判断した時は、最も有効で負担の少ないことから補助していくことで、
「自然」と「安全」の両立ができるのだと考えております。そのため、当院では危険予見能力を高め、緊急に対応できるバックアップ体制を整えております。
人を愛し、命を授かり、産み育てる・・・
あたりまえのあたりまえのようで様で、とても奇跡的なことではありませんか?
自然分娩は、うむ・うまれるという本来わたしたちに備わった⼒を最⼤限に引き出す営みです。
長い産婦⼈科医師としての経験の中で、自然分娩を希望して妊娠期を過ごし、出産に臨んだお母さまと赤ちゃんは皆輝いているのを目のあたりにしてきました。
私たちは自然分娩を推奨します。
自然分娩に備えて10ヶ⽉・・・自分と赤ちゃんの変化をみつめ出産について考えた多くのお母さまがリラックスして満足のいくお産をされています。
又、充実した出産経験が、0歳児期〜1歳児期の子育ての自信に大きくつながることがデータでも出ています。(Benesse次世代育成研究所 第1回妊娠⼦育て基本調査・フォローアップ調査 2011年4⽉版より)
しかし出産のときだけ「自然に産もう」と思っていても、なかなかうまくいかないものです。妊娠期は、お母さんと赤ちゃんの自然分娩への準備期間です。
「自然分娩に向けて、自分の出来る範囲で努力して、心と体を整えていく」
その過程こそが大切であり、その時に頑張ったという自信はその後の育児の大きな支えになるのだと思います。
ですから、妊娠や分娩中の過程で医療行為が必要となり、結果として、帝王切開や吸引・鉗子分娩になったとしても、やってきた努力が無駄になるわけではなく、自分や家族にとって大切な新しい命を守るために行ったものであると誇りを持っていただけるはずです。
上記の医療サービスを提供するには患者様及びご家族との信頼関係がとても重要になります。
平成8年の開院時、医師1名、助産師3名の少ないスタッフで質の高い医療サービスを提供するためには、我々がリスクを背負って努力をする分、患者様にも当院及び妊娠・出産・育児に対する強い気持ちと繋がりを持っていただきたいという結論に至りました。
当時の3名の助産師、続いて入職した職員たちの使命感と誠意ある関わりで、当院の理念に賛同する多くの患者様に来ていただけるようになりました。
お産を取り巻く環境も変わってきましたが、当院の医療理念「安全な環境のもとでの自然分娩」は変わりません。
意欲あるスタッフは患者様と信頼関係のある職場にやり甲斐を感じ集まります。
リピーターさんや当院の理念や方針にご賛同くださる患者様を優先するためにも、我々と患者様の望まれる所に大きくずれがある方には通院をご遠慮願うことがあります。
分娩施設を探されている場合、「近いから」「上の子供が泊まれるから」だけで当院での分娩を決められると、
こちらの求める自己管理がストレスとなり前向きになれないことがあります。
「痛いのが苦手なので無痛分娩希望」「予定に合わせて分娩日を決めたい」などの計画的な分娩をご希望の方には転院をお願いしております。
分娩場所を決められる際に「理想の赤ちゃんの迎え方」をお考えください。 全てのお母さんがご自身にあった幸せなお産ができますように。
理事⻑ 浦野 晴美