Assisted Reproductive Technology

Assisted Reproductive Technology : ART

生殖補助医療(ART)とは

採取した卵子と精子を体外の環境で受精させ、受精卵(胚)を子宮内に戻す方法です。
生殖補助医療、ART(アート)、高度生殖医療などと言われます。
自然妊娠では卵管を通って精子と卵子が出会う必要がありますが、卵管が通っていない場合(卵管閉塞、卵管切除後など)は精子と卵子が出会う事が出来ません。
卵管の通りが良くとも、精子の数が少なかったり動きが悪かったりする場合は精子が卵子まで辿り着く事が出来ません。
(その他にも原因がはっきりせず、タイミング法や人工授精などの治療を行っても妊娠に至らない場合もあります。)
上記のような医学的適応や今までの治療経過を考慮し生殖補助医療という選択肢を選ぶ事が可能です。
生殖補助医療には大きく分けて「体外受精」と「顕微授精」があります。

flow

調節卵巣
刺激
排卵誘発剤を使用して複数個の卵子を育てる方法(低刺激・高刺激)や、排卵誘発剤を使用しない(自然周期)方法があります。

当院では低刺激~高刺激・自然周期、どの方法でも対応可能です。
患者様の年齢や卵巣状態に応じて決定していきます。
採卵
経膣超音波を見ながら卵巣に細い針を刺して、卵胞内にある卵子を吸引して回収します。
当院では基本的に静脈麻酔で採卵を行いますが、患者様のご希望によっては局所麻酔で行う事も可能です。

採卵自体は15分前後で終わります。
採卵後はしばらくの間、休んでいただき帰宅はお昼頃となります。
受精
  • 体外受精(in vitro fertilization : IVF)
    採卵された卵子に精子を振りかけ受精させる方法で、精子自身の運動性によって自然な受精に近い受精方法となります。
  • 顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection : ICSI)
    顕微鏡下で細いガラスの針を用いて、精子を直接卵子に注入し授精させる方法です。
培養
採卵翌日に受精判定を行います。
受精した胚は専用の培養液で、体内と似た環境にて大切に培養します。
受精後は最大7日間培養を行い、その間に胚移植や凍結保存を行います。
凍結
成長した受精卵(胚)を凍結します。 基本的には胚盤胞まで成長させて凍結をおこないますが、受精卵(胚)の成長を考慮して分割期で凍結もおこなっています。
凍結保護剤が入った特殊な培養液に浸して脱水・濃縮した後、-196℃の液体窒素中に入れて保存します。
融解
凍結された受精卵(胚)を、加温された培養液に急速に入れて融解し、徐々に凍結保護剤を薄めて脱水・濃縮された状態から元に戻します。
胚移植
胚移植用の柔らかいカテーテルを用いて、腟から子宮内に胚を戻します。
移植胚数は原則1個のみです。
複数個移植することでその周期の妊娠率は上昇しますが、胚を1個ずつ移植しても、2個一度に移植しても、最終的に妊娠する確率は変わりません。
一方で、一度に2個移植した場合の多胎妊娠のリスクは上昇します。
このため、日本産科婦人科学会でも、移植胚は原則1個にするよう勧めています。
妊娠判定
胚移植日から9~12日目に採血をして、妊娠判定を行います。
さらに7~10日後に経腟超音波にて胎嚢が見えるか確認します。

WEB予約がご利用できない方は、診療時間内にお電話にてお問い合わせください。

Others

卵子活性化処理(Ca2+イオノフォア処理)
顕微授精(ICSI)を行なっても受精しない場合があり、その原因のひとつに卵子の活性化障害が考えられます。
卵子の活性化障害が疑われた場合、Ca2+イオノフォアという卵細胞膜のカルシウムイオンの透過性を亢進させる薬剤を用い、人為的に卵子内部のカルシウムイオン濃度を上昇させ、顕微授精後の受精を手助けします。
SEET法
胚盤胞を育てた培養液を子宮内に注入する治療法です。 受精卵(胚)が分裂を繰り返しながら胚盤胞になり子宮に到着するまでの間に、胚と子宮内膜がお互いに作用しあって、子宮内膜を胚が着床しやすい状態に変化させています。
移植の2~3日前に胚盤胞を育てた培養液を子宮内に注入することで、胚盤胞から分泌された因子によって子宮内膜が刺激を受け、着床しやすい内膜に変わると考えられています。
二段階胚移植法
受精後2~3日目の初期胚をまず1個移植し、更にその2~3日後(受精後5日目)に胚盤胞を1個移植する方法です。着床という現象は、胚と子宮内膜の相互の応答によって成立すると考えられているため、はじめに移植された胚が子宮内膜と相互応答して着床に適した状態に内膜を誘導し、続いて移植される胚盤胞の着床率が高まることが期待できます。
PFC-FD療法
再生医療の中に、PRP(Platelet Rich Plasma : 多血小板血漿)療法というものがあります。
これは、患者さまの血液中に含まれる血小板の成分だけを抽出し、患部に注射することで損傷した組織の修復が促進され、治癒力を高める効果が期待されています。さらにPRP活性化させ血小板由来の成長因子のみを抽出し、無細胞化した上で濃縮して PFC (血小板由来因子濃縮物) を作製します。
PFC は血小板を高濃度に濃縮している為、成長因子濃度も高くなり、PRP の約2倍の成長因子が得られます。これをフリーズドライ加工することにより PFC-FD が完成します。
また、フリーズドライ加工によって成長因子の濃度が下がることなく、常温で6ヶ月の保存が可能となります。
不妊治療における PFC-FD 療法では、移植周期に子宮内に PFC-FD を注入し、成長因子のはたらきによって子宮内膜が十分に厚くなり、受精卵の着床率の上昇が期待できると言われています。