Laboratory

Laboratory

生殖補助医療(ART)の世界は、日々進歩しています。
論文や学会で新しい知見を取り入れることで、患者さまの治療に活かしていきます。

培養室の設備

培養室と手術室（採卵室）の天井には、防塵フィルターが組み込まれているので、培養室全体の空気が清浄に保たれています。
照明は卵子や受精卵に有害な紫外線をカットしたLED照明となっており、卵子に極力悪い影響を与えないように配慮されています。

体外受精の設備・機器

タイムラプスインキュベーター

インキュベーターとは胚(受精卵)を体外で育てる培養器のことです。
タイムラプスインキュベーターは、経時的に画像を撮影するためのカメラが付いていて、胚の培養に適した環境の中で成長を観察することができます。
従来のインキュベーターは、胚の成長を観察するために一度、培養器の外に出して観察を行っていました。
その際、培養器内などの温度などが変わり、胚にとって環境の変化による大きなストレスがかかっていました。
また、受精卵の発育状況をより詳しく観察することができるので、受精卵の質を正確に評価し、移植に適した受精卵を選択することができます。

紡錘体可視化システム

紡錘体は、染色体を正しく分配する働きをしている微小器管の集まりで、正しく機能することで、染色体を正常に分配します。
紡錘体は、普通の顕微鏡ではみえませんが、紡錘体可視化システムの特別なレンズとフィルターを通すとみえるようになります。
紡錘体は通常、第一極体という細胞の直下に出現しますが、まれに直下ではないことがあり、顕微授精時に紡錘体を傷つけてしまうことがあります。
また、卵子が成熟しているかの指標になり、適したタイミングで顕微授精ができるため、受精率の向上が期待できます。
当院では第一極体放出確認のみではなく、顕微授精を行う前に紡錘体観察を行って紡錘体の有無によって卵子の成熟度を確認し、顕微授精を行うタイミングの指標として応用し、受精率の向上に役立てています。

PICSI
（Physiologic intracytoplasmic sperm injection：生理学的精子選択術）

顕微授精を行う際にヒアルロン酸を用いて成熟した精子を選別することで受精率・妊娠率を上げ、流産率を低下させる効果を期待できます。

ヒアルロン酸は卵子にも含まれる自然な物質

ヒアルロン酸は卵子の膜に含まれる自然な物質です。
DNAの損傷の少ない正常な成熟精子はヒアルロン酸と結合する性質を持っています。
未熟精子はヒアルロン酸に結合するレセプター（受容体）を持っていないため、ヒアルロン酸と結合しません。
成熟精子のみがヒアルロン酸を含む卵子の膜に結合し、卵子の中へ侵入していきます。
この性質を利用し、PICSIではヒアルロン酸を含んだ培養液を用いて自然に近い形で正常な成熟精子を判別します。

安全管理への取り組みについて

ART取り違え防止システム

当院ではお預かりした精子や卵子・胚に取り違えが起こりえないシステムを構築しています。
精子を入れる容器、精子や卵子・胚を培養する容器にはお名前とIDが記載されたシールを貼り、精子調整や胚操作を行う際には二人体制でチェックをし、指差し、声出しでダブルチェックを行っています。
さらに当院では二次元コードを使用した取り違え防止システムを使用しています。

二次元コードはお名前・IDの情報が登録されています。
万が一、二次元コードの内容がエラー表示になった場合はそこから先の作業へは進めなくなっています。また、認証の履歴はすべてコンピューター上に記録されており、作業履歴として後から確認もできるようにしています。

緊急時メーリングシステム・バックアップ電源

インキュベーターは、非常事態にも対応できるようバックアップ電源を設けています。
また、災害発生時にインキュベーター等の機器が異常をきたした際、緊急時メーリングシステムよって胚培養士へ通知され、夜間でも駆けつける体制を整えています。