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今回は、胚培養士のお仕事について紹介します。
第1弾は、人工授精です。
まず、人工授精(AIH:artificial insemination with husband`s semen)とは何なのかという所をお話します。
人工授精は調整した精子を子宮内に注入することを言います。
精子の状態が良くない場合や性交障害、タイミング療法で結果が得られなかった場合などに行う方法です。
卵管閉塞などを除いたほぼすべての不妊原因に対して、体外受精の前の治療として用いられています。
具体的には、細い管を使って子宮頸管を通り抜け、事前に採取して調整した精子を子宮の奥深くに注入します。
その後の受精・着床は自然妊娠とまったく同じです。
では、私たち胚培養士はどこでかかわっているかというと、精子の調整という工程でお手伝いをしています。
精液中には、正常な運動精子以外に、不動精子や奇形精子、不純物(細菌、白血球など)など含まれています。
そのまま子宮内に注入すると、細菌感染の恐れや精液中に存在するプロスタグランジンによる子宮収縮作用によって痛みを感じることがあります。
また、射出された精液の量は子宮腔内の容量と比べて多いため、全量注入するのは困難です。そのため効率よく運動精子を子宮腔内に注入するためには精液調整という行程が必要となります。
調整という工程では、密度勾配遠心法を使用しています。
培養液に精液をのせ、遠心分離機にかけると、射出された成熟精子は重いため、以下の写真のように沈降します。この沈降した精子を綺麗に洗浄し、人工受精に用いています。
人工授精のメリット
排卵日に、より正確にタイミングを合わせて、子宮内に確実に精子を注入できます。
人工授精の妊娠率は5~10%程度とされていますが、この方法で妊娠される方は3~4回のうちに妊娠されることが多いため、5~6回(約半年間)程度行って妊娠に至らない場合にはART(体外受精など)へステップアップとなります。
また、当院の体外受精や顕微授精の精液調整では、遠心分離を行わない「ZyMōtスパームセパレーター」を使用していますので、次回ご紹介したいと思います。
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投稿者/ Contributor
- 浦野晴美・理爺長
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育良クリニック創設者。
どうでもいいことを「理爺長のつぶやき」でつぶやいたり産科医としてのコメントをのせます。 - 院長
- とらママ
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育良クリニックマネージャー。
2011年1月、第一子「とらさん」
2012年6月、第二子「りゅうちゃん」
2014年2月、第三子「うまくん」
2016年4月、第四子「おさる」
2020年10月、第五子・初女子「じら」
(すべて愛称)
を当院で出産。
妊娠・出産・育児の奮闘記を綴ること多し。 - 医療スタッフ
-
医療スタッフ
開院当初からの超ベテラン。
医療的な質問に回答したり、日々のできごとを綴ります。 - 育良事務局
- コンシェルジュスタッフがイベントやお知らせを随時配信します。